学校名

秋田大学教育文化学部附属中学校

授業者

清水 功一

共同研究者

石原 慎司

題材名と指導のポイント

「詩のイメージに合った歌をつくろう」
-教育用ボーカロイドを活用した知覚と感受の視点で歌をつくる活動は、より豊かな感性の伸張につながったか-

題材について

本題材は、既存の詩から自分たちが旋律にしたい詩を選び、そのイメージを自分の言葉で具現化していく。そのイメージを基に、知覚と感受の視点で歌を創作するという内容で構成している。知覚と感受の視点とは、作曲者が詩のイメージを感受し、それを音楽として表現するために必要な旋律の音と音のつながりやリズム、速度や音の重なりを考え、それらを知覚することである。この視点を加えることにより、創作に向かう生徒の手順が明確化され、これまでに培った「感性」や「知識」「技能」を最大限に生かしながら、創意工夫する力の育成を機能的に図ることができると考える。なお、生徒は1年次の「いろいろな音階をつかって旋律をつくろう」という題材において創作活動を行っており、自分たちが選んだ音階を使って、順次進行や跳躍進行の特徴を使いながら旋律づくりを行っている。また、歌づくりで使う詩は、国語科の授業で学習している谷川俊太郎、工藤直子の詩集から選ぶことにした。ここでは、言葉のまとまりを考えて群読をするなど、歌づくりで必要な知識を学習している。本題材では、それらの経験を生かし、音楽を形づくっている要素である〈旋律〉に〈リズム〉〈速度〉〈テクスチュア〉の要素を加えることで、全体の流れを考えて詩の雰囲気に合った歌の創作を行う。完成後に、創作した作品を聴き合い、詩のイメージを表現するために工夫した点を互いに見つけ合い、それを共有する。これにより作曲者は聴衆の反応を知り、「表現」としての創作が完結し、自己評価に結びつく。これらの経験は、〈形式〉〈構成〉を踏まえたさらなる曲づくりにつながっていくことであろう。本題材の学習における「感性」を駆使しながら「創造」する過程においては、ICTを活用する。これにより、生徒一人一人の表現が広がり、より一層個性的な創作活動ができることを期待している。

生徒観と指導観について

豊かな表現力と発想をもった生徒が多い。特に合唱活動は、小学校で合唱集会を行うなど、美しい響きで歌おうとする意識が高い。しかし、ここ最近新型コロナウイルス感染拡大防止対策によって歌唱活動が制限される中で、生徒の歌唱表現力を存分に生かして活動できる場面が少なくなっているのも事実である。その状況において、感染対策を十分に講じて活動できる分野の一つが、創作活動であると考える。昨年度も、創作活動を多く取り入れ、新たな発見や喜びを見いだすことができた。本題材での指導を通して、1年次に高めた旋律創作に関わる「感性」をさらに研ぎ澄ませたい。具体的には、音楽を形づくっている要素〈旋律〉に加えて、〈リズム〉〈速度〉〈テクスチュア〉の視点を加える。〈リズム〉においては、詩中の言葉のまとまりを理解してリズムを考えることができる。〈速度〉は、詩のイメージが聴き手に最も効果的に伝わる曲の速さを選択できる。〈テクスチュア〉では、和音の音を基にして、美しく響く音の重なりを考えることができる。本指導を通して、これら「感性」の伸長を図りたい。

研究の具体的な実践事項

本題材では、「ボーカロイド教育版」を活用することで、生徒が直感的に旋律づくりに取り組む。そして、生徒一人一人の思考がボーカロイドの歌声で作品となる。作品を共有する場面では、他者の思考を瞬時に共有しデータの一元化と保存ができるように、「コラボノート」を使って発表を視覚化、データ化する。また、本題材では、詩のイメージを聴き手に伝えるために、創作の手順を考える。音の長さ・高さ・リズムを組み合わせるなどのさまざまな内容を深く考え、それを聴いて修正し、試行錯誤を重ねて一つの作品を完成させていく。これらは、音楽科における「プログラミング学習」を意識しており、試行錯誤することが論理的思考へとつながる。「創造性」を発揮する場に導く「手段」として有効であると考えた実践である。

目標

(1) 曲想と音楽の構造との関わりについて理解するとともに、創意工夫を生かした表現で音楽をつくるために必要な、条件に沿った音の選択や組合せなどの技能を身に付け、歌をつくることができる。
(2) 旋律、リズム、速度、テクスチュアを知覚し、それらの働きが生み出す特質や雰囲気を感受しながら、知覚したことと感受したこととの関わりについて考え、どのように音楽をつくるかについて思いや意図をもつとともに、曲に対する評価とその根拠について自分なりに考えながら、互いの作品を聴き合うことができる。
(3) ボーカロイド教育版を用いた歌をつくる活動に関心をもち、主体的・協働的に創作と鑑賞の学習活動に取り組もうとしている。

学習の様子



子どもたちの反応と感想

  • 他の友達の意見を簡単にみれたりすることです。打ちやすいし、みんなの総合的な考え方が、とてもみやすいのではないかなと思いました。
  • 席から移動しなくてもみんなの意見を知ることができて便利だった。
  • みんなの考えを簡単に見れて、意見の交流がとても行いやすかった。
  • みんなの意見が一度に見れるので意見の共有がしやすかった。
  • 文字を書くよりもパソコンで打った方が早く書けて良かった。また、ほかの人やグループの意見が分かるので良かったと思う。
  • 音楽室は机がないので紙よりも入力しやすかった。(感想)みんなの考えが発表しなくても見られた。(良かった点)ペーパーレス化できる。(紙よりいい点)
  • 紙よりいい点は、みんなの意見が集ったときに誤字があってもすぐに直すことができる。何よりも見やすくて困ったときに周りの書いている人のを参考に書くことができるから便利。
  • スクリーンにみんなの考えが共有できる 紙みたいにかさばらない。
  • みんなが何を書いたのかすぐに共有することができて回収したり配布したりする手間が省けていいと思いました。写真とかを張り付ける時も各自でタブレットで見ることができるので見やすくていいと思いました。
  • 時間も短縮できるし、良いと思う。しかし、なんでもかんでもデジタル化するのはよくないと思う。(書く力が衰える。、目が悪くなる。など))
  • 色んな班の考えを共有することができて良かったと思いました。また、自分たちの考えと他の班の考えを比較してより良い意見をさらに感がることができたと思いました。
  • やはり、クラスのみんなと意見の交換が簡単にできるところがいいと思いました。写真を張り付けるときに、貼れない写真があるので、どの写真も自由に貼れたらいいなと思いました。
  • ほかの人の意見がまとめてみることができるのはいいと思いました。
  • 物が少なく授業でできる範囲がとても広くてよかった。また紙ではできないことも簡単に行えるようになり便利。
  • キーボード入力なので、意見が転々と変わる話し合いですぐに意見を修正できるのはとてもいいと思います。また、いろんな型があって、個人でもクラスでも作業できるのが、とてもいいいと思います。変えてほしいところも特にありません。
  • 他の人達の意見をコラボノートで確認することが出来るので、自分の意見と周りの意見を比較する時に役立ちました。
  • みんながどんな考えをもっているのかがすぐにわかるし、話し合いもスムーズになると思うので良いと思う。
  • 他のグループの意見も見れるというところがとてもいいと思いました。自分のグループの意見などをまとめるのにも使いました。全体的に使いやすいと思いました。
  • みんなの考えが見えて意見の共有がしやすかったのかなと思います。でもほかの人の意見を見てしまうと、どうしてもその人に似てしまうんです。
  • なにかをまとめたり、感想を書いたりするときなど、いろんなことに活用できてよかった。
  • 変換が素早くできるので、紙よりやりやすい。周りの人の意見が読みやすい。
  • 自分の意見だけでなく、他の人の意見も閲覧できるので、考えを記述する場合に便利だなと感じました。
  • コラボノートは簡単に他の人の考えが分かるので話し合うときにわかりやすいです。
  • 僕はコラボノートがとてもよかったと思いました。気軽に自分の意見を入力、共有でき、友達の意見も知ることができたからです。また音楽室は机がなかったので、紙でなくパソコンとても楽だと感じました。
  • 鉛筆で書いたり消しゴムで消したりする手間が省けてよかったです。
  • 一気にいろんな人の意見を見ることができ、紙と違って画面を大きくしたりして自分の見やすい字の大きさにすることができてとても授業に参加しやすかった。
  • 紙の場合、視力が悪い人が文字を見れず意見の共有ができないといったこともありましたが、コラボノートは個人のpcから閲覧する為そういった点で配慮が効いているとかんじました。ただ、ズームを行う時、マウスで特定のバーを動かさないと紙面だけでなく全体も動いてしまったので扱いずらさを感じました。画像ファイルのトリミングも出来たら使い心地はもっと良くなると思います。
  • コラボノートは書きやすく、なおかつ正確に書けるところがよかったです。
  • いいところはみんなの前で発表せずに意見を話すことができるから、意見を出しやすい所、みんなの意見を一気に見れるのでいつも意見をあまり出さない人に意見も見れる所。

この実践の指導案について

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